第4章 ハイキュー!!/木兎光太郎
その時、ふわりと隣から匂いが鼻をかすめた。
木兎の匂いだ。
特別何かつけてるわけじゃないのに、
木兎の匂いだってすぐにわかる。
シャンプーと
少しワックスの匂いと
洗濯の匂い、
それから、汗のにおい……。
やっぱりだめだよ。
私はこいつがどうしようもなく好きなんだ。
好きで好きで、頭がおかしくなりそう。
"諦めなきゃいけない"のに……。
"好き"が膨らんでいく。
「雨が降ってなきゃもっときれいなんだよなぁ」
ボソッと呟く木兎に「え?」と声が出た。
木兎が見ている方向を見つめる。
ザザン……。
ザザン……。
大きな波。
潮の匂い。
すぐ目の前に海があった。
いや、帰り道だから毎日見てるけど
でもこんなにしっかり見たのは初めてかもしれない。
雨空だから、あまりきれいに見えない。
それに、少しだけほんの少しだけ荒れていた。
私の心の中みたい。
「夕方の海ってすげえ綺麗なんだよ。夕日と海がキラキラしてるっていうか、なんて言えばいいの?とにかく綺麗なんだよ!!」
木兎がこんなのに興味があるなんて知らなかった。
また木兎のことを知った。
嬉しい……けど、
でもその綺麗な風景、彼女さんと見たんだよね。
彼女さんと見た風景。
なんで私に言うの?
心の中に閉まっときなよ。
私に言わないでいいから。