第33章 音也×ベビードール
「それじゃ、いってくるね!!」
ちゅ…と頬にキスをする音也くんは
あの日から学校に行かせてくれない。
『いってらっしゃい…』
玄関で音也くんを見送って、
ジャラ…
私をこの家に縛りつける
首輪と鎖に少し触れる。
『はぁ…洗濯しよ…』
最初の頃は音也くんのお嫁さんになって
主婦になったら、こんな感じかな〜?
なんて前向きだった考えも
最近では不満に変わりつつあった。
それでも音也くんにこの生活から離れたいなんて
口が裂けても言えなかった。
あの日、四ノ宮くんと私が話しているところを
偶然見られてしまっていた私は何も知らないままその日の夕方、
音也くんに正直に話そうと思って家を訪ねた。
いつもなら明るく出迎えてくれる彼が
その日は何故か留守にしていて
おかしいな〜なんて、俯いて壁に背もたれて待っていたら
「あれ〜?○○!どうしたの〜?」
と、いつもの明るい声が聞こえた。
私はぱっと顔を上げて音也くんをみた。
珍しく眼鏡をかけた音也くんは
いつもの優しい笑みでこちらに小走りで向かってきてくれた。
私は癒されるな〜なんて、のほほんとしてた。
でも、その瞬間ゾッとしたの。
音也くんの服には返り血みたいなものがあって、
かけてる眼鏡には見覚えがあったから…
『音也く…』
"それ、どうしたの?"
なんて、聞きそうになったけど、
私の防衛本能がそれを許さなかった。
「なぁにー?」
なんて、いつもの笑顔でこう答える彼は
いつになく黒いオーラを纏っていた。
私は『なんでもない、 …なんでもないの…』
と、ただそれだけしか答えられなかった。
そして、この日から私は音也くんの家に監禁されることになる。