第31章 セシル×OL
「いらっしゃいませ…」
にこやかに私をいつもの席に誘導してくれるウェイトレス。
『こんにちは。
今日のおすすめで…。』
窓際の少し静かな席に座りながら
ウェイトレスに注文すると、またにこりと笑って
「承知してます。」
『はは…毎日だもんね笑』
ウェイトレスと顔を見合わせてクスッと笑う。
この子は春歌ちゃん。
毎日この時間にここに来ておすすめを頼む私を優しく迎え入れてくれるキラキラした可愛い女の子。
春歌ちゃんは注文をとってから、他のお客さんに呼ばれていってしまった。
(最近、人…増えてきたな…)
この物静かな空間がいつか賑わってしまうのかと思うと…
(少しさみしい…かな…)
**
10分後
「お待たせしましたっ。」
そう言ってお皿を置く子は
『…??』
(初めて見る子…)
「…??
あれ、ここじゃない…??」
少し戸惑ったように伝票を見ようとする彼に
『あ、あぁ…ごめんなさい、
初めて見る人だったから…;;
ここであってます。』
とお皿をいただく。
そして、その少年はニコニコと話し出す。
「あ〜、なるほど‼︎
俺、一十木音也。
いつもは土日にバイトで入ってるんだけど、
今日は学校1時限だけだったから、
急遽手伝うことになったんだ〜!!」
『学校…
大学生…??』
「うん…ぁじゃなくて、はいっ!!」
『ふふっ、…タメ口でいいよー?
相手はおばさんなんだし…』
「……!!
…うん…///
でも、おばさんじゃないよ!!
"おねーさん"だよ?」
イケメンに子犬のような潤んだ瞳で見つめられて
ドキドキしないわけもなく、
『!!!!////
も、もうやだっ…//
おばさんからかわないの〜;;;』
なんて、茶化して誤魔化す。
(というか、何をドキドキしとる。
アラサーのおばさんがっ!!
ちょっと美少年におねーさんとか呼ばれたくらいで…)
「からかってなんか…」
それでもなお私を立ててくれようとする彼に
「すいませーん…注文お願いしまーす!!」
と、お客さんの声。
「あ…ヤバ、すいません、それじゃ失礼します!!」
また敬語に戻っちゃったけど、
私はにこりと笑って彼を見送った。
(なにげにこのカフェ…
美男美女揃いだよなぁ…)