第28章 トキヤ×チアガール
『ど、どうして…っ…』
ぎゅっと私のTシャツを掴んで
震えながら尋ねる□□さん。
「貴女のことが好きで好きでたまらないからです…。
誰かに取られたくないからです…。」
強く抱きしめながらそう答えると
『……へっ⁉︎///』
思ってもみなかった返答だったのか
彼女の顔がみるみる赤らみます。
「…///(可愛い…)」
『っ、そんな…っ、
からかわないでください…っ//』
抱きしめる私の体を離そうと体を背けますが
耳まで真っ赤なのがわかります。
これは予想外…
「あ、あの…」
『わっ、私、
好きな人がいます‼︎////』
私が話しかけようとすると
遮るようにそう言う彼女。
な、な、なんですって!?!?
「す、す好きな人が!?
ま、まさか…翔…ですか?」
驚きと、恥ずかしさと、悲しさが
混じり合ったなんとも言えない感情になって、
慌てて彼女を抱いていた手を離します。
なにを先走っているのでしょうか…私は…
『いえ…来栖くんはお友達です。
私の好きな人…は…
中学の時、よく図書室で見かけていた
名前も顔も知らない人です…。/////』
私の質問に顔を真っ赤にして
答えてくれる□□さん。
って…ん?
中学?…図書室?
「名前はさておき…
顔も…ですか?」
『顔も名前も…分からないんです…。
でも、どことなく一ノ瀬さんに
雰囲気が似ていました。』
「……。」
日が西に傾いて静かな倉庫の中を
オレンジに染めます。
『私…こんなオレンジ色の夕日に照らされた図書室で
本を読むのが好きだったんです…
その人も…よく図書室に来る人でした…
ストレス発散のように本を読み漁る
そんな風にも見えました。』
「……」
もしかしなくても…
私のことですよね…コレ。
『ある日…勇気を振り絞って
チラッと顔を見てみたんですけど
逆光で全然見えなくて…
結局、顔も名前も分からないまま
卒業してしまいました。』