第27章 日向×スク水
って、
これじゃ
愛されてるかわかんないよ…
少女漫画に出てくる男の子は
だいたい二人。
両方ともヒロインのことが
好きで好きでたまらないから
ヒロインが言う言葉に
一喜一憂して
ときにドロドロになりながら
戦いを繰り返し、
ヒロインに選ばれた者が
勝利する。
結局は大体ヒロインが得をしてる。
ヒロインは
ヤキモチを妬かれようと
思わずとも
妬いてもらえる。
涙を流しているだけで
心配してもらえる。
少し微笑んだだけで
可愛いと思ってもらえる。
胸があるだけで
エロい要素も含まれてる。
天然とか、
ふわふわしてるとか、
元気があるとか、
地味だけど優しいとか、
ある一定の属性に
属しているだけで
成立してしまう。
でも現実はもっと残酷だ
少女漫画を読む人は
読まない人より
この残酷さを知ってると思う。
世の中そうは
甘くないって
本を閉じたとき思うの。
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次の日
「□□さんっ!」
廊下を歩いていると
田中くんにこえをかけられた。
あ、そうだ…
返事をしてなかったんだ…
彼は田中太郎くん
平凡な名前に似合わず
イケメンでスポーツ万能、成績優秀
歌唱力も抜群で
一十木くんたちと
肩を並べるくらいすごい人なんだよね。
あ、いい忘れてたけど
私、これでもAクラス。
龍也くんとの出会いは
入学前のオリエンテーリングのときかな…
道に迷ってたところを
助けてもらったのがきっかけだったかな、
『田中くん……』
「あ、あの…昨日の返事って…」
田中くんとなら
もしかしたら
少女漫画のような
甘い胸キュンな
世界に飛び立てるかもしれない。
こう思ってしまった。
これが悪かったんだよね……