第1章 穴無き穴と仲間達
シリアスなど我が人生に関わってはこないとばかり思っていたが珍しく心情は神妙だった。
そんな私が向かっていた先・・・それは、
海だ。
#11 彼女とカッコイイ奴
この岩鳶の町は漁港が近い。つまり海が近い。朝早くにバイトへ行く途中、この町から望む漁港からの景色は圧巻されるものだった。
そしてその後バイト先で仲良くなったおばさんに、ちょっと歩いた所に砂浜があるというのを聞いていた。
今日は空も澄んでいるし、天気もいいから然程危なくもないだろう。
「うっひゃぁ。」
海に着いた私は思わず感嘆の声を漏らした。
この地域は、まるで田舎だ。侮辱とかそういうのではなく、晴れ空であれば星々が海を照らすだなんて私の住んでいるところじゃなかなか見れるものじゃない。
本当にこの辺にはため息つくような風景が沢山ある。ディープブルーの中の白い点達が、その海の底の青を明るくさせその濃淡の差が美しい。
(芸術家かよ。)
セルフツッコミなんていれながら(実は虚しい。)たった一人になってしまったかのよう幻を歩く。
ぼんやりと砂浜を歩いていると、砂浜の近くに作られた堤防を見つける。その堤防は砂浜の横ラインから飛び出るようになっていて、その先に二つの長さが違う人影が見えた。
なんだなんだカップルか?お?お?イチャイチャロマンチックかよちくしょうめ。(ゲス顔)
堤防に手すりが無いのを見て、2人とも落ちて朽ち果てろ・・・。と小さく念を送る。
しかし私もマナーのなってない非リアではない。2人の世界を邪魔せぬようにと、人がいる気配を殺しながら(そしてその影をガン見しながら)私はもっと先へと歩いた。
***
少し喉が渇いたので、近くで見つけた釣具店に隣接した自動販売機で缶ジュースを買った。
砂浜に座って飲もうと思うが、まだ多分カップルがー・・・。うーん、とオレンジジュースの缶を片手に自動販売機前で佇んでいる。すると後ろから突然何処かで聞いたような中性的かつ幼いような声が私に喋りかけてくる。
「すいません、ならんでますか?」
「え?あ、すいませー・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
「え?・・・あれ。」
振り返ると、自動販売機の光に照らされて驚いた顔を見せる男の子を見た。