第11章 My Cheer Girl (山口 忠)
烏野商店街の近くまで来ると、いつの間にか雨がやんでいた。
山「雨、止んだね」
貴「うん。あ!忠君、気付かなくってごめん。肩、結構濡れてるよ」
傘を持っていた反対側の俺の肩はかなり濡れていた。小さな傘だったし、女の子を濡らすわけにもいかないしね。
彼女は急いで自分のタオルを出し、俺の肩を拭いてくれた。
山「これぐらい大丈夫だよ」
貴「ダメだよ。肩大事にしないと。冷やすとよくないんだよ」
真剣な顔で心配された。俺は嬉しくてつい笑ってしまった。
貴「あ、大げさだって思ったでしょ」
彼女はちょっとすねた顔になった。こんな表情もするのかと思うと、自然と口元が緩む。
山「そんなことないよ。ちょっと嬉しかっただけデス」
彼女は顔を赤くした。そしてごまかすように話題を変えた
貴「えっと・・・その・・・バレー部の練習きつそうだね。自主練もすごいし」
山「俺・・・この前少しだけ試合に出たんだけど、ミスっちゃって。もう絶対二度とあんな悔しい思いはしたくないから・・・。あ、ごめん。なんか愚痴っぽくなっちゃって」
貴「ううん、全然そんなことないよ。・・・私のおばあちゃんがよく”人生には無駄がない”って言ってた。それはいい事も、悪い事も、役に立つ日が来るって事なんだって。だから、その悔しい思いも忠君の役に立つ日が来るよ」
貴「それに私も忠君の事、応援してる。じゃ、私ここで大丈夫だから」
山「え、遅いし家の前まで送るよ」
貴「この辺人通りも多いし、明るいから大丈夫!また明日ね」
そういって彼女は小走りで帰って行った。