第11章 My Cheer Girl (山口 忠)
部活が終わりツッキーと部室を出る。ちょうどテニス部も終わったようでつばさちゃんとばったり会った。
貴・山「あ、」
月「お先に」
ツッキーは気を利かせて先に帰って行った。俺たちは並んで帰った。
貴「ごめんね、月島君に気を使わせちゃったかな?」
山「ツッキーはそんなこと気にしないから大丈夫だよ」
俺の言葉に彼女は安心したようだった。
貴「月島君と忠君って幼馴染だよね。私ここに来るまで転勤族だったから、2人を見てると幼馴染ってうらやましい。なんだか特別な感じがするから・・・」
山「そうだね。ツッキーは俺にとって特別だと思う」
彼女はフフフっと笑った。
貴「あ、雨だ」
空には黒い雨雲が広がり、ポツリポツリと大粒の雨が降りはじめていた。
山「しまった、傘持ってこなかった」
貴「私、折り畳み傘持ってるよ」
山「俺が持つよ」
彼女から折り畳み傘を受け取る。思ったよりも小さな傘なので、身体が触れ合うほど近づいてしまう。彼女が濡れない様、なるべく彼女のほうに傘をさす。
彼女も部活帰りなので、普段下している髪をポニーテールにしていて新鮮に見える。こっちの髪形も似合っていて可愛い・・・。なんだか緊張してきた。
貴「・・・忠君は覚えてないだろうけど、中学の転校初日にも急に大雨が降ったんだ。さすがに1日目だから一緒に帰れる友達もいなくて、困ってたら忠君が傘貸してくれて・・・。心細かったから、すごく嬉しかったんだよ」
俺は記憶を遡るが覚えていない。自分が覚えてないことを彼女は覚えてくれていたと思うと、なんだかくすぐったい気がした。