第31章 笑顔の行方(茂庭 要)
こんな気持ちをずっと抱えているくらいなら、いっそのこと私からさよならをしよう。
貴「茂庭さん。私この前見たんです。彼女さんがいらっしゃったんですね。他の女の子と仲良くしてるのわかったら、喧嘩になっちゃいますよ?」
茂「え、俺に彼女?!」
茂庭さんはかなり驚いている。私はこの前のことを話した。
貴「だって・・・あの、私見たんです。この前の雨の日茂庭さんと彼女さんが同じ傘に入ってて、躓いたところを助けてあげたのを・・・」
貴「私、彼女さんに気を悪くさせるようなことしてましたね。ごめんなさい。・・・私、茂庭さんのこと好きでした。だからもっと傍にいたかったです。でも、もう終わりにします」
その場を急いで走っていこうとする私の腕をつかんで茂庭さんは言った。
茂「ちょ、ちょっと待ってよ!彼女はバレー部のマネで偶然傘を忘れたらしいから一緒に入っていただけで付き合ってないよ!・・・ごめん。俺が悪かったんだ」
茂「ずっと俺は自分に自信がなくて言えなかったけど、つばさちゃんの側に居たいって思ってる。連絡が途切れそうになった時すごく寂しかったんだ。俺が彼氏じゃダメかな?」
貴「・・・え、あの、それって・・・」
茂「俺はつばさちゃんのことが好きだよ。ちゃんと伝えなくてごめん。俺とつき合ってくれないかな?」
私は嬉しくてポロポロと涙が出てきてしまった。
茂「そ、そんなに泣かないでよ」
茂庭さんはおろおろとしている。
貴「・・・だって嬉しすぎて・・・」
茂「俺、つばさちゃんの泣き顔も綺麗で好きだけど、笑ってる顔のほうが大好きだよ」
そういって茂庭さんは親指で涙をぬぐい、手を握ってくれた。
そして私の手の中には幸運を連れてきたクローバーがそよそよと風になびいていた。
END
→あとがき