第31章 笑顔の行方(茂庭 要)
小梅がいなくなってから、もう10日。ホントは学校休んで小梅を捜しに行きたいけど、赤点ギリギリだしなぁ・・・。わたしは普段の勉強不足を反省した。
しかし反省するのも束の間、午前の授業は一向に頭に入らず先生の声は私の耳を素通りするだけだった。
そして昼休み、私は購買部やジュースの種類が豊富な自動販売機がある隣の棟に向かった。
隣の棟は建築科や機械工業科などの棟なので、ほとんどの生徒が男子を閉めている。
貴(あ~、やっぱりここは男子が多くて迫力あるなあ。野菜ジュースだけでいいからはやく買って帰ろうっと)
自動販売機で野菜ジュースを買い、教室へと戻る。小梅の事を考え下を向き歩いていたので、周りの様子など目に入る余裕などなく、歩いていた男子と肩がぶつかってしまい私は転んでしまった。
?「うわぁ、ごめんね!大丈夫?」
貴「あ、平気です。こちらこそすみません」
私は転んだ拍子に、膝を少しすりむいてしまった。ぶつかった相手は手を差し出してくれたので、彼の手をとり身体を起こした。
?「でも膝から血が出てるし保健室行こうか?」
貴「ちょっとすりむいただけですし絆創膏も持っているので、気にしないでください」
相手に気を使わせないように、無理やり笑う。彼はそんな私の顔をじっと覗き込んだ。
?「でも君、顔色も悪いよ?具合悪そうだけど・・・」
貴「あ・・・、だい・・じょうぶです・・・」
その人の温かな手と優しい声に、私は我慢していた緊張の糸がプツンと切れてポロリと涙が出てしまった。
ぶつかった人はオロオロとしている。
?「ご、ごめん、やっぱり痛いよね!すぐ保健室に・・・」
貴「ち、違うんです。これは・・・ちょっと考え事してて・・・。すみません。失礼します」
?「あ、ちょっと」
呼び止められたが私は走り去ってしまった。