第28章 lovesickness (月島 蛍)
皆の姿が見えなくなると月島君は手首を離し、長い沈黙の後ぽつりと言った。
月「・・・朝、ゴメン」
貴「ううん、私の方こそ泣いてゴメンなさい」
月「そんなこと、別に・・・。あ、CD忘れないうちに渡しておく」
貴「ありがとう、大事に扱うね」
ずっと聞きたかったから嬉しい。うん、気もまぎれるし少しづつ気持ちを整理しなくちゃね。
その時視線を感じ、顔を上げると月島君と目があった。
月「・・・前から聞こうと思ってたんだけど・・・、何でマネになったの?最初、君すごい人見知りで思いっきり帰宅部って感じだったんだケド」
貴「やっぱり、そう思うよね。中学の時いろいろあって、相手の事が分からないと話すのが怖くなっちゃって。あ、でも慣れたら平気なんだよ」
貴「バレーのマネになったのは兄がバレーやってる影響が大きいかな。私、運動苦手だからバレーへたくそで。だからせめて頑張ってる人の応援をしたいと思って」
月「そう・・・」
それから暫く会話がなくなり、私達の足音が道路に響く。私は月島君にちょっと緊張しながら話しかけた。
貴「・・・えっと、私ホントは月島君の事少し苦手だったの。何か、月島君って女子に人気あるし、ちょっと近寄りがたい雰囲気もあったからよけい声かけづらくって。でも、ほんとは優しいんだなと思って・・・。昨日も今日も気を使わせちゃったし・・・。今までごめんなさい」
月「今だけ優しいフリしてるだけかもしれないよ」
貴「え?どういうこと?」
月「今なら傷心の君に付け入る隙があるから・・・とかね」
私の胸がドキリとする。
貴「あの、それって・・・」
月「はい、家着いたよ。じゃ、また明日」
月島君は私の声を遮りヘッドフォンをかけ何事もなかったように歩き出し、私は月島君の背中を見えなくなるまで見送った。