第26章 seeds of happiness (茂庭 要)
お風呂に入り部屋着に着替え、二人で冷たいお茶を飲み寛ぐ。
貴「要さん。改めてお誕生日おめでとう」
私は隠しておいたプレゼントを要さんに渡した。
茂「ありがとう。開けるね」
プレゼントは仕事にも使えるこげ茶の革鞄にしたんだ。
茂「今使ってるやつ擦り切れそうだったから助かった。ありがと」
要さんは私をやさしく抱きしめてくれた。
貴「実はね、もう一つあるんだ・・・」
茂「もう一つって何?」
貴「あのね・・・、やっぱり恥ずかしいな」
いざとなると顔から火が出そうだ。要さんは私のほっぺをフニフニとつねり
茂「ほら~~、もったいぶらない~」
と遊んでいる。
貴「はにゃして~~」
要さんは笑いながら手を離し、ワクワクとこちらを見ている。私はいつも使っている鞄からある手帳を取り出して要さんに渡した。
貴「・・・これ・・・」
茂「・・・つばさ、これって」
貴「うん、あのね来年の春に私たちパパとママになるんだよ。今3ヶ月だって。要さんに一番に報告したかったの」
そう、私が要さんに渡したのは母子手帳だった。
茂「ほ、ほんとに?お腹にいるの?」
要さんは私のお腹を壊れ物を扱う様にそっと触れる。
貴「うん、そうだよ。二人の赤ちゃんだよ」
一瞬要さんの目に涙が見えたような気がしたけど、彼はすぐに私の首に顔を埋めるよう抱きしめたのでよく見えなかった。
茂「ありがとう、身体大事にしなくちゃな」
ちょっと声が震えていたから、やっぱりうれし泣きしてくれていたんだと思う。
私は抱きしめられているのに、私が彼を抱きしめているように感じた。よかった喜んでもらえて・・・。
しばらくそうしていると要さんは思い出したように身体を離し、真剣な顔になった。
茂「ところで、悪阻は大丈夫なの?仕事辛かったら辞めてもいいんだよ。あ、こんな氷の入った飲み物は身体を冷やすからダメだよね。そういえば、今日お酒飲んだでしょ。何で赤ちゃんいるのに飲んじゃったの?!」
急に口うるさいお母さんのようになってしまった要さんに私はクスクスと笑ってしまった。
茂「コラ、笑わない。大事な事でしょ!」
要さんは憮然としてたけど、そんなあなたと一緒に居られてしあわせです。
END
→あとがき