第23章 恋の有効期限(及川 徹)
それは中学卒業後の春休みのことだった。久しぶりに3人で遊園地に遊びに行こうという話になり、私はとても楽しみにしていた。
だけど当日・・・。
貴「岩ちゃん来ないね」
及「あ、ラインはいってる。え、風邪で39度も熱があるって。二人で楽しんで来いってさ」
貴「え?岩ちゃんが風邪なんて珍しい。大丈夫かな?」
及「そうだね、帰りにでも岩ちゃんトコ寄ろうか」
貴「うん、お土産買っていこうね」
そして電車で遊園地に向かい1日を楽しんだ。ジェットコースター、ゴーカート、お化け屋敷・・・。何だかこれって、はた目にはデートだよねなんてちょっと思ったりして・・・岩ちゃんには悪かったけど、楽しかった。すごく。
そして楽しい時間はどんどん過ぎて、帰る時間になった。
貴「あ~、楽しかった。岩ちゃんも来れたらよかったのにね。今度はカラオケに3人で行こうよ」
及「そうだね」
そして駅のプラットホームで電車を二人で待つ。
及「・・・ねぇ、つばさ――――」
貴「え?」
私は徹の方を振り向いた。徹の声と快速通過のアナウンスが重なる。
貴「―――何?聞こえなかった」
及「・・・いや、何でもないよ」
徹は寂しげに笑った。私は・・・本当は聞こえていた。そして、徹はきっと私の聞こえなかったフリに気付いたんだろうと思う。
―――”つばさ、好きだよ”
彼の眼は本気だった。だから私は聞こえないフリをするしかなかった。
私だって好きだよ。でもそれ以上に周りが彼を放っておかない。彼には熱烈なファンが多く、彼女がいてもお構いなしなのだ。
ただでさえ幼馴染の私はファンに睨まれることが多い。その私が”彼女”の立場になったら?
私はきっと周りの女の子に嫉妬され、目の敵にされてしまうだろう。私はそれに疲弊し、徹と一緒にいるのがつらくなるのが目に見えていた。
ずっと笑って彼の側に居たい。だから私は幼馴染でいることを選んだ。
自分の為に徹の事を傷つけて、こんなこと許されるはずがないと思いながら・・・。
高校入学後、徹は彼女が出来たり別れたりといったことを繰り返していた。その度に心は揺れるものの、私たちの関係は変わらないままだった。
あれから2年ちょっと。私はずっと溢れそうな想いを押し殺している。