第22章 大好きだから・・・(日向翔陽)
翔陽と出会ったのは高校入学前の春休み。大型遊具のある公園で迷子になり泣いていた翔陽の妹、夏ちゃんとぶつかった私が一緒に彼を捜してあげたことがきっかけだった。
夏ちゃんはお兄ちゃんに会って安心したのか手に持っていた風船を離してしまった。それは近くの木の枝に引っかかってしまい、とても取れるような高さじゃなかった。
夏ちゃんはまた泣き始めてしまった。
日「夏、大丈夫だ、兄ちゃんがとってやる」
なんていったけど・・・。身長が私と10センチぐらいしか変わらないぐらいなのに?なんて思ってたら・・・彼は助走をつけて・・・飛んだ。まるで羽が生えているみたいに・・・高く。
ほんの一瞬の事だったはずなのに、私にはスローモーションに見えた。彼が飛んだ瞬間、全身の血がざわつき、そして私の心は完全に奪われてしまった。
貴(すごい・・・)
日「はい、夏。もう手、離しちゃだめだぞ」
そう言って優しく風船を夏ちゃんに手渡した彼は、私の方を向くと
日「えっと、その妹が迷惑かけちゃったみたいで、すみません。ありがとうございました」
ぺこりと頭をさげる。
貴「あ、いえ。お兄さんが見つかってよかったです」
日「じゃ、失礼します!」
夏「お姉ちゃん、ありがとう」
彼と夏ちゃんは元気にそういうと、手を繋いで帰っていった。
貴(・・・お兄さんの名前、聞きそびれちゃった。また会えるかな・・・)