第18章 On your side・・・(2)(岩泉 一)
それから、二人で待ち合わせて帰るようになった。
ハジメちゃんは大抵徹くんと一緒に待ち合わせの正門に来る。(徹くんにも”彼女のフリ”は内緒だ。ハジメちゃん曰く、私の事を黙ってた仕返しらしい)
徹くんは”つばさちゃん、岩ちゃんのどこがいいの?俺にしなよ”とかいろいろ言っては私達をからかう。
そしてハジメちゃんは”クソ川!彼女いるクセに何言ってんだ!早く帰れ!!”って言って徹くんを先に帰すんだ。
その後、私に合わせてゆっくりと半歩前を歩き、時々後ろを振り向いて私がついて来てるか確認する。
家まで送ってくれるけど”変な噂が立ったら悪いから”って言って、私が誘っても家には入らない。
バレー部が休みの月曜には岩泉家のご飯に呼んでくれて、私はおばさんと一緒に台所に立ってご飯を作り、皆で食べる。
私はハジメちゃんに良くしてもらってばかりで、何もしてあげられない。
それをハジメちゃんに言うと”気にすんな”って言われるんだ。
ハジメちゃんはいつも真面目で本気だ。今だって私の事心配してくれている。
・・・どうしよう。私、このところずっとハジメちゃんの事ばっかり考えてる。”彼女”じゃなくて”フリ”なのに・・・。
私は胸の奥がズキンと痛くなった。