第17章 On your side・・・(1)(岩泉 一)
結局俺たちはリビングで用意されたケーキとコーヒーを口に運び、くつろいでいた。
岩「いつから気付いてたんだ」
貴「え、入学式で見かけた時・・・かな」
岩「・・・まぁ、3年まで同じクラスじゃなかったけど・・・」
・・・声をかけてくれればよかったのにとも思いつつも、昔の事知ってるやつにあんまり会いたくなかったのかとも思った。
彼女はクスクスと笑った。
貴「だってハジメちゃん、全然気付いてなかったから逆に言いづらくて・・・。徹くんは気付いてたみたいだけど」
岩「悪かったな」(クソ川、面白がってわざと黙ってたな。明日殴ってやる)
俺は顔が真っ赤になったのがわかった。
俺達は学校は違っていたけど小学3年ぐらいまで互いの家を行き来したり、公園でもよく遊んでいた。
あのころはかなり元気で活発な印象だったけど、今は静かであまり人を寄せ付けない雰囲気さえある。学校の中でも廊下ですれ違う男子が思わず振り向くぐらいキレイだ。
岩(苗字も変わってるし、こんなにキレイになってたら気付かねーって)
貴「・・・ありがとう。一緒にいてくれて」
岩「いや、別に・・・」
貴「・・・今日、最悪の誕生日になるところだった。でも、こうやってケーキも頂けたし、一人でなくてよかった」
岩「・・・誕生日おめでと」
貴「ありがと」
彼女はフッと笑った。でもどこか寂しそうな笑い顔だった。
外も大分暗くなってきたので俺は彼女を送っていった。