第17章 On your side・・・(1)(岩泉 一)
岩泉said
岩「もう、ゴミないな?ゴミ捨て場持っていくぞ」
今週は掃除当番だ。俺はゴミ捨て場に向い廊下を歩いていた。するとこの時間、誰もいないはずの理科室から話し声が聞こえてきた。
男1「もう、お前と付き合うなんて無理。俺、他に好きな女が出来たから・・・。じゃあな」
男は一方的に話すと理科室から出て行った。中から、女の子のすすり泣く声が聞こえる。
・・・嫌な所に出くわした。俺はさっさとこの場を立ち去ろうとした。その時、再び理科室の扉が開き走ってきた女の子とぶつかった。
ドン!
貴「きゃぁ!」
岩「うわっ!」
貴「い、岩泉君?ごめんなさい。大丈夫?」
岩「あぁ、大丈夫だ」
隣の席の桜井だった。怪我はないが、ぶつかった拍子に俺の持っていたゴミ箱の中をぶちまけてしまった。
俺たちは二人でゴミを集める。俺は桜井の涙の痕に気付かないフリをした。
ゴミもあらかた集め終わり、ふと彼女を見るとポタポタと涙を落としている。
・・・こんな時にこんなこと思うのは悪いのかもしれないけど・・・。すげぇ、キレイな泣き顔だ。思わず見とれそうになるが、慌てて目をそらす。
俺はハンカチを桜井に差し出した。彼女は”ごめん”っていって、ハンカチを受け取った。
貴「多分・・・聞こえてた・・・よね」
岩「・・・悪りい、聞くつもりなかったんだけどな」
彼女は弱々しく笑った。
貴「ゴミ捨て、一緒に行くよ」
俺たちは二人でゴミ捨て場に向った。