第16章 Beginning (東峰 旭)
東峰said
・・・このまま黙っていたら、東京に行ってしまうんだ・・・。
東「・・・つばさ東京行くの?」
貴「やっぱり、聞いてたんだ。行くよ」
東「・・・俺、つばさと離れるの嫌だ。側にいたい。つばさのことが・・・好きだ」
繋いだままの手に力を込める。
貴「うん、私も旭の事好きだよ?」
東「どういう意味で?俺だってもう男なんだよ」
俺はつばさの手を引っ張り抱きしめた。
貴「こ、こら、旭。あんたはまだ高校生だからダメだよ・・・。私、男作らずに卒業まで待っててあげるから・・・。その時まで気持ちが変わらなかったら・・・ね」
旭「それって、ちゃんと男として見てくれてるってこと?」
貴「まぁ、一応は」
旭「・・・一応って・・・」
貴「あんた進路も決まってないんだから、目の前の事をちゃんとしてから。それからの話。叔母さんを安心させてあげないと”付き合ってます”なんて言えないでしょ」
旭「・・・俺ちゃんとする。だから絶対待ってて欲しい」
つばさはニコリとした
貴「それから・・・東京行きは長期出張扱いで1年ぐらいで帰ってこれるから」
旭「・・・え?」
貴「家賃もったいないし、向こうでは社宅あるから、ここに帰ってきたらあんたんちの空いてる部屋にしばらく下宿することになってる。こっちの支社にも月に数回は顔を出すことになるから。そういうことで、よろしくね」
旭「・・・もしかして、試した・・・のか?」
貴「何の事?早とちりしたのは旭でしょ?」
つばさは笑いながら俺の頭を撫でる・・・。
やっぱり彼女にはかなわない。それでも俺は彼女を癒し、守れる男になりたい。
俺は頭を撫でた彼女の手を取り、その指先にキスを落とした。
END