第16章 Beginning (東峰 旭)
東峰said
あの披露宴事件から一ヶ月、つばさはまるでそんな事がなかったかのように、家に出入りしていた。
変わったことと言えば・・・、俺がつばさの事を”姉”と思えなくなっていたことを自覚したことだ。しかし生まれてからずっと弟扱いされてきた身分としては、彼女に告白というのもハードルが高すぎる。
俺はため息をつき玄関のドアを開ける。
東「ただいま」
奥から母親とつばさの声がする。二人は俺が帰って来たことに気付いてないみたいだ。
俺は部屋で着替えて、1階に下りる。二人の会話が聞こえてきた。
母「つばさちゃん、あと1ヶ月で東京本社付になるの?ずいぶんと急ね」
貴「うん、だから今のアパートも引き払わなきゃ」
母「そう、わかったわ。片付け手伝うから」
東(え、あと1ヶ月で東京に行く?!つばさと離れるのか?!)
東「・・・ただいま」
母「あら、旭おかえりなさい」
貴「よ、旭おかえり」
旭「あの、つばさ・・・」
貴「何?」
旭「・・・ごめん、何でもない」
俺はその話を聞けなかった。