第12章 ツキアカリノシタニサクハナ(菅原孝支)
俺たちはその場で足を止めた。二人の姿が見えなくなってから桜井が呟く。
貴「やっぱり、潔子だったんだ。・・・澤村と潔子ってお似合いだよね」
菅(あぁ、もう黙ってられない)
菅「桜井は好きなヤツいるのか?」
貴「・・・うん、いるよ」
菅「大地だろ?」
貴「え?」
菅「あのさ桜井ショックだと思うけど・・・、俺じゃダメか?いきなりだってわかってるけどさ。・・・俺はお前が大地のこと忘れるのに俺を利用してくれていいと思ってる」
桜井はポカンとしている。
貴「・・・す、菅原?え、ち、ちょっと待って・・・」
彼女は俺の言葉の意味をようやく理解したのか、耳まで赤くなった。
菅「返事、今すぐでなくていいから・・・」
貴「違うの!あのね私、澤村には2年の時に”好きな人がいる”ってフラれてて、もう気持ちの整理はついてるの」
菅「え?・・・でも授業中、大地の事見てた・・・よな?」
貴「えっと、菅原ってモテるじゃない。私なんて普通に女友達の一人だと思ってたから・・・。彼女になれないなら一番側にいられる存在になりたいなーって思って・・・。自然と澤村に目が行っちゃったのかも」
菅「いや、俺はモテないけど・・・。それはつまり・・・あの。じゃあ、さっきの二人のことは・・・」
俺の頭は思いも寄らない彼女の言葉に、混乱していた。
貴「純粋にカレカノっていいな~って思ったけど・・・」
菅「な、何だよ~~、それ」
貴「・・・だから私は菅原の事が・・・
菅「待った!さっきの言葉、言い直させて」
菅「・・・桜井、好きだ。俺と付き合って下さい」
貴「はい!」
桜井は花が咲くように笑った。
何だか回り道をした俺の恋。それでも彼女が笑ってくれるならそれでいい。
俺たちは手を繋ぎ月明かりの下、長くて甘いキスをする。そして今夜、俺は彼女の香りに包まれて幸せな夢を見るんだ。
END