第12章 ツキアカリノシタニサクハナ(菅原孝支)
?「お冷どうぞ」
聞き覚えのある声に、俺は窓から店員の顔に目を移した。
菅「・・・え、桜井?」
貴「す、菅原!・・・なんでここにいるの?!」
菅「いや、偶然看板を見つけて・・・」
彼女はいつもかけている眼鏡を外し、髪も2つのお団子にまとめ、片側にスリットの入った白いロング丈のチャイナドレスを着ていた。
眼鏡を外した顔も、もちろんチャイナドレスを着ているところなんて見たことないけど・・・、結構、いや、かなり似合っていて可愛い。スタイルだって、抜群だ。ヤバイ、俺は身体の血液が逆流するんじゃないかと思った。彼女も相当顔が赤くなっている。
菅「・・・アルバイトか?」
烏野は基本アルバイト禁止だ。
貴「え~~~っと、ウチがやってる店なの」
菅「え、じゃあカウンターの店員さんって桜井のご両親?」
貴「うん、そう。手伝わないとお小遣いが貰えないんだ。この格好だし、学校で知ってる人は誰もいないの。お願い!黙ってて!!」
彼女は必死に訴える。
菅「大丈夫大丈夫、誰にも言わない」
俺は笑いながら言った。そして、こんな彼女を知っているのが俺だけだなんて、ちょっとした優越感に浸る。彼女はホッとした顔になった。
貴「ありがと。ところで、ご注文お決まり?」
菅「麻婆豆腐とライス。辛さって調節できる?」
貴「10段階で注文できるよ。おススメは4かな」
菅「じゃあ10で」
貴「えぇ!10を食べきった人って、今までで数人しかいないよ?段階踏んだ方がいいと思うけど・・・」
菅「俺、激辛好きなんだ」
貴「知らないよ~~」