第1章 君と僕は許嫁
「悪ィ。遅くなった」
『ううん、大丈夫だよ。部活お疲れ様』
「……じゃあ、帰るか」
『うん』
本を閉じ、それをカバンの中にしまう
その姿を見つめ、帰る準備ができたのを確認し、教室を出た
図書室の電気を消せば、そこはもう真っ暗で
昼の学校とは違う世界を感じた
2人、肩を並べ学校をでる
の家までの道のり、お互いのことを話した
好きなもの、好きな小説や映画
本当にどうでもいい話
でも、知らないことを知ることは楽しかった
だけど、話はそんなに長くは続かなくて
無言の時間が過ぎる
気まずいような、恥ずかしいような
そんな感情が生まれ、俺の心臓は張り裂けそうだ
その時、
自分の手に何かが触れたような気がして
ふと、自分の手を見る
すると、の手が伸びていた
彼女を見ると、俺の視線に気が付き、手をひっこめ顔を逸らし、「ごめん」と一言
耳まで真っ赤に染め上げた姿がかわいいって思って
そう思った自分が恥ずかしくて、でも嫌な気分じゃなくて
気が付いたら、彼女の手を握っていた
「あ……のさ、手……繋いで帰るか……。その、つ、付き合ってるんだし………」
しどろもどろになりながら言葉を吐き出す
絶対俺、顔赤い
こんな姿、誰にも見られたくねえ
特に及川
あいつだけには絶対に見られたくない
『………う、ん』
小さく、だけどしっかりとうなづく
ぎゅっと握られる手
緊張して手汗が出てるけど、そんなもの気にもしなかった
ただ、の小さくて柔らかい手から感じる温もりが心地よかった
熱と熱が交差する
の体温が伝わってくる