第10章 一言
『一くん、あのさ……』
「別れるつもりなんてねえから」
の言葉を遮って、俺は言う
顔をゆがめて、泣き出す
何度も謝った
「迷惑いっぱいかけちゃう、ごめんね。ごめんね」
何度も何度もは謝った
「謝んなよ。笑えよ。俺はの笑った顔が見たい」
『う、ん……。一くん、こんな私だけどずっとそばに居て』
「当たり前だ、ずっとそばに居る」
大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼす
そんな彼女を俺は抱きしめて、背中を擦る
子供のように泣きじゃくって、疲れたのだろうか
閉じ込めている腕の中から規則正しい寝息が聞こえた
俺は、を寝かせ、彼女の頬に唇を落とした
きっとこれからは幻肢痛に苦しめられる
自分の脚が痛んだような気がした
……バカだろ、俺は
自分が苦しんでも意味ないだろ
本当につらいのはあいつのほうなんだから
俺にできることは
「あいつを支えること、だよな……」
暗い空の下、俺はそうつぶやいた