第10章 一言
部屋に行くと、部屋の中からは聞きなれた声が聞こえた
さらに眉間のしわが濃くなった
部屋の中にはやはりというべきか、いつもの3人がいた
及川、花巻、松川である
「……何してんだ、てめえら」
「あ、岩ちゃんおかえり~」
ひらひらと手を振る及川をにらむ
「勝手に人の部屋に入ってんじゃねえよ」
「岩ちゃんのお母ちゃんが通してくれたから勝手じゃないよ」
及川のダブルピースに腹が立って頭をはたいた
ケラケラと笑う花巻に、人のベッドに横になって今月の月バリを読む松川
こいつら自由人かよ……
どさっと、スポーツバックを床に置き、俺もその場に胡坐をかく
「で、お前はまたのところに行ってきたと」
「だったらなんだよ」
「別に何も」
月バリから目を離さずに、そう聞いてくる松川
何が言いたいのか理解できず、少し口をとがらせた
「てか、岩ちゃん。俺岩ちゃんのお母ちゃんから聞いたんだけど」
「何を?」
「岩ちゃんだけがちゃんとお見舞いできる理由!!」
心底楽しそうに言う及川
くいつく花巻に松川
「なになに、教えて」と少年のような笑みを顔に張り付ける花巻をぶん殴りたい
「医師の人に"は俺の妻だ。赤の他人じゃねえ!"って言ったんだって!!」