第9章 赤の他人じゃない
「ありがとうございます」
「なに、これくらいどうってことないよ」
ははは、と笑うの父親
俺もつられて笑った
数分後、医師は戻ってきた
「今回は特別に許可をもらってきたので、入室可能です」
「ありがとうございます」
「まったく。何がロマンチックだよ。これだから女って生き物は……」
ぶつぶつと何かを呟く医師
あぁ、なんとなく察した
俺たちは、のいる病室へと案内された
病室には以外誰も居なくて、広い病室にただ一人眠る姿に、息苦しさを感じた
一番奥の窓際のベッド
呼吸器はついていなかった
自分で息はできているらしい
だけど、彼女の体はいくつもの管と繋がっていて、痛々しかった
「……」
名前を呼んでも答えてはくれない
当たり前だ
の頬に触れる
温もりはそこにあった
ずっと眠ってるから死んでんじゃないかと思った
よかった、生きてる
だからこそ、声が聴きたくなった
""と呼べば、必ず"一くん"と返ってきて、それが当たり前だった
「」
名前を呼んでほしい
「……」
俺の名前を言ってほしい
「っ……」
俺は横たわるの手を握った
そして気づく
の体に掛けられている掛布団の違和感に
下半身のふくらみがなかった