第9章 赤の他人じゃない
「え……?妻?え、結婚してるの?」
目を丸くして俺を見る医師は、なんとも間抜けだ
「君たちまだ高校生だよね?結婚してるの?というか君今何歳?法律上まだ結婚なんて無理だよね?どういうこと?」
「実際まだ結婚はしていない」
「……ふ、なんだ。ちょっとびっくりしたよ。それならまだ親族じゃないから――――」
「俺はあいつの許嫁だ。来年結婚する」
俺のセリフに、医師は吹き出した
笑いをこらえようとしているのだろう
両肩が小刻みに揺れている
カチンと頭にくる
「ごめんごめん。あまりにも面白いこと言うから。……ふぅ。君の意志ははよくわかったよ。それでも無理だ。諦めなさい」
肩に手が置かれる
触れたところから、これ以上何も言うなと言われているような気がした
唇を噛みしめる
頭を撫でられた
慰めなんていらない
俺の気持ちなんてよく知りもしなくせに
「先生、私からもお願いします。この子だけでも病室に入れてもらえませんか」
その時、後ろから声が聞こえた
振り向くとの父親がいた
「娘とこの子は許嫁で結婚するんです。夫が妻を心配するのは当たり前でしょう。それに娘も意識がないとはいえ、愛している人には会いたいもんですよ」
俺の横に立って、医師を真っ直ぐ見つめ
そう言い切る
医師は何か言いたそうな顔をしていたが、あきらめた様子で
「では少し、待っていてください」と言ってどこかへ行った
残された2人
俺は、の父親に頭を下げた