第1章 君と僕は許嫁
彼女の方を向けば、真剣な瞳がそこにあった
だけど、その頬は少し赤くて、この言葉を言うのにものすごい勇気を使ったんだなって痛いほどわかった
自分も彼女の恥ずかしさが映ったのか、顔に熱がこもるのがわかる
『一か月でいい。一か月でいいから付き合って、それでだめだなってわかったら、許嫁の件はなしってことにしよう』
「……わかった」
ここで断ったら、彼女の勇気を無下にして、一生消えない傷を残してしまう
それは、には失礼だと思った
付き合うってなんなのかよくわからないけど、でも俺にできることはちゃんとやろうって思った
「俺、今日部活あるから教室かどっかで待っててくれ。家まで送ってく」
『あ、ありがとう』
にこりと笑う彼女に、ドキッとした
彼女の友達に向けられていた笑顔とは少し違う笑顔
何が違うのかなんてわからないけど、でも違って見えた
俺達はメアドやLINEを交換し、そして教室に戻った
教室に入れば、やはり人の渦に飲み込まれた
いちいち説明するのがだるくて
「付き合ってる」と言えば、黄色い声が教室を包み込んだ
は友達に囲まれ冷やかされていた
顔を真っ赤にしている姿は、なんかみていておもしろくて
笑っていると、
今度は俺が男子に冷やかされて、顔を赤く染めながら抵抗した
ちらりとを横目に見れば、彼女と目が合って、今度は逸らさずに、口元をゆるめてみた
彼女もまた、やわらかく微笑んだ