第6章 名前
図書室に寄り、の姿を探す
委員会が長引いているのか、彼女はまだ仕事をしていた
仕事といっても、返却された本を指定の場所に戻すだけ
だが、その小さな手には何冊もの本が乗っかっていた
「手伝うか?」
『あ、岩泉君。大丈夫だよ、そこに椅子に座って待っててよ』
にこり、と笑う顔に何も言えなくなる
俺は椅子に座り、彼女の姿を見つめる
『今日ね、みんな借りてた本を一気に返してきて、ちょっと仕事が伸びちゃった』
困ったように、ふふ、と笑う
そういえば、今朝のHRで担任が言っていたな
借りた本早く返さないと補習だって
職権乱用だなと思ったけど、口に出さなかった
その結果がこれか……
彼女の後姿を見つめた
部活中に及川に聞いた
女子は名前で呼ばれた方が喜ぶのか、と
「当たり前でしょ。女の子は好きな人から名前で呼ばれる方が嬉しいんだよ☆……というか、岩ちゃん。それ普通に気づきなよ」
今回ばかりは正論だと思ったから殴らなかった
名前、か