第6章 名前
と、体を重ねて一か月が経った
及川たちに言ったらからかわれるとわかっていたから隠していた
しかし、バレた
なんでバレたのかは知らないが、こいつらが言うには“雰囲気”だそうだ
「やっと岩ちゃんも男になったんだね」
「卒業おめでとう。これでお前も一人前の男だ」
「コレお祝いのアンパン」
松川からアンパンをもらったが、なんだこれ
全然嬉しくねえ
むしろ腹立つ
クラスの連中もニヤニヤと俺を見ていて、そんなにわかるもんなのか?
別に今更恥ずかしくもねえけどよ
どうせ、このクラスの大半だって経験してることだろうし
そんな熱も過ぎた頃、
クラスの連中に言われた
「岩泉、お前さ。のこと名前で呼んだりしねえの?」
その言葉に俺は何も言わなかった
すると、信じられないと言った風に顔をしかめる
「うそ、だろ……」
「一回、ある……」
「うわっ、それは男としてどうなの?お前股間は男になったのに、そういうとこまだ童貞なのな」
「うるせえよ。別に名前で呼ばなくても俺達は―――」
「“俺達は愛し合ってる”ってか?クソ寒いぞ」
身震いをする友人をぶっ飛ばした
愛し合っているとかそんなんじゃなくて、名前で呼ばれなくたって、
あいつが俺のことを呼んでくれるだけで
それだけで、俺は十分嬉しいんだよ