第2章 お試し期間
ふわり、と優しい香りが漂った
伸ばしていた手は、彼女の黒髪に触れた
そして、そのまま滑り落ち、頬をなでる
『い、わいずみくん?』
困惑した顔のと目が合う
あー…俺ってこんな奴だったんだな
初めて知った
頬を触っていた手は、顎に移動し、彼女の唇に俺の唇を重ねた
触れるだけのキス
だけど、唇から伝わる体温は熱かった
ゆっくりと唇を離す
は驚きで声が出せないみたいで、その姿に思わず笑った
パクパクと金魚のように口を開閉させる
今にも大声を出しそうだったから、手を引いて図書室を出た
少し歩いて、自分たちの教室に入る
手を離して彼女の顔を見れば、顔を真っ赤にして今にも泣きそうな顔をしていた
『なんで、いきなり……っ』
右手で、自分の顔を覆う
ずず、と鼻をすする音が聞こえて、罪悪感が残った
泣かせるつもりはなかったんだけどな
「悪い。でも、止められなかった」
『なんで……?』
「のこと、好きになったから」
告白をした
ほとんどその場の勢いだ
心臓がどくどくと脈を打つ
これ、に聞こえてんじゃねえか?
緊張していないフリを装いたかったけど、無理だな
「好きだ、。俺と付き合ってほしい。こんなおためしとかじゃなくて、ちゃんとした彼女として」
真っすぐを見る
その頬には、いくつもの涙があふれていて
イエスかノー、どちらか2択しかなくて
初めて好きになった女で
自分のものにしたくて
彼女の答えをただただ待った
『私も、好き……。岩泉君のこと1年生のころから好きだった』
答えはイエスだった