第18章 思う想いと重い思い
次の日
授業が終わった放課後
俺は松川を呼び出した
3年の廊下は部活に行く奴らや帰る奴らでにぎわっていた
俺と松川はその中で廊下の窓に背中を預けるように突っ立っていた
「で、俺に話って?」
くるり、と松川は体を反転して窓のさんに肘をつく
俺は横目にそれを見て、一つ息を吐いた
そして静かに口を開く
「……距離、置こうとしなくていいから」
松川が俺の顔を見る
俺と松川の視線がぶつかる
「たぶん、あいつもそれを望んじゃいないだろうし」
昨日、及川と話したことを思い出しながら俺は言葉を吐いた
松川は驚いたように目を丸くし、そしてはは、と笑った
「それ、あいつにも言われたよ。電話越しでさ、泣きながら言いやがんの」
「……ふっ、だろうな」
「本当は、なかったことにしようと思ったんだ。告白して振られて遠ざけて……。あいつを好きだったていう気持ちを消したかった」
そっちのほうが楽になれると思ったんだ
淡々と語るこいつの言葉を俺は黙って聞いた
窓の外を見れば、サッカー部の奴らがグラウンドに集まって、客観的にそれを眺めていた
俺達の間に静かな時間が生まれる
耳に聞こえるのは、廊下のざわめきと外から聞こえる運動部の掛け声だけ
俺は、そっと口を開いた
「なかったことにするのは簡単だ。けどよ、そんなの寂しくねえか?」
俺は振られる側の気持ちなんてわかんねえけど
わかんねえけど、忘れてしまうのは寂しいことなんじゃねえのかなとは思う
それに、自分の気持ちに嘘を吐けるような器用な人間でもねえだろ、お前は
「……寂しいというか、苦しいに近いかもしれない。うん。お前の言うとおりだな。うん。自分に嘘はつけねえや」
ぐっと手を組んで背伸びをする松川
その表情はどこかすがすがしそうで、でもどこか未練がましい表情でもあった