第16章 〇〇は犬も食わない
『……』
は無言でプリンのふたを開け、食べ始める
怒っている顔をしているが若干口元がにやけている
「口にやけてっぞ。そんなにプリン食いたかったのか?」
『なっ……!!違うし!』
「やっと俺と話してくれたな」
にしし、と笑えば唇をかみしめる
おもしろいなぁ
頬を染めながら、は言う
『べ、別に…もぐもぐ、プリンのことはもうどうでもよかったし……もぐもぐ。仲直り、もぐもぐ、しようと思ってたし』
「食うかしゃべるかどっちかにしろ」
喧嘩の原因がなんとなくわかった
俺が勝手にプリンを食べたことなんだろう
だからあの時松川は「プリン買え」って言ったのか
このことがもうどうでもいいとしたら
何でこいつはまだ怒っているんだ
『別に、告白がダメとは言わないけどさ。でもさ、あんなに嬉しそうにしちゃってさ、ちょっと私の気持ちも考えてほしいよね』
やっぱり嫉妬か
俺はにやける口元を抑えた
「仕方ねえだろ。告白されるの慣れてねえんだから」
『それでもさぁ……んっ』
「これで許せ」
こちらに顔を向けた瞬間、俺はにキスをした
プリン味のキス
ぺろりと唇をなめれば、蛸のように顔を染め上げる
「岩泉がキスしたああああああっ!!!」
そして教室もまた黄色い声が響き渡った
やべ、ここ教室だって忘れてた
友人たちにからかわれ赤くなる顔
午後の授業、俺は机に突っ伏して赤い顔を覆い隠していた
こうして俺達の喧嘩は幕を閉じたわけだが
少しの間、クラスの連中にいじられる羽目となった