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HQ短編‼︎

第5章 【オメガバース】 月島 影山 菅原


結局試合は烏野が点差をつけて勝利した。
スタメンが湧き出る汗を払いながらこちらに歩いてくるのをタオルを持って迎えると、優男達(北一の奴らに比べ大分優しい人ばかりだ)は皆笑顔で礼を言った。
同級生マネの谷地仁花がドリンクが持てずにわたわたしているので空いている手で手伝うとほぼ涙目である。
彼女はいつもわたしが手伝うと涙目になる。きっとその理由は、わたしもわかっているけれど。

長時間の同姿勢観戦によって凝った肩をほぐしていると、ユニフォームで首筋の汗を拭いながら谷地さんと話している影山と不意に目がかち合った。
スポーツをやる人間の無駄のない筋肉の隆線はいつ見ても綺麗だが、わたしは特に影山の細身に見えるものの洗練されたそれが好きだった。
「ジロジロ見んな」とばかりにガンをつけてくる影山を一笑に付して、近寄る。

「影山」

「何だ」

「今日トスが乱れたね」

げっとばかりに口元が揺れる。なんてわかりやすいスネ顔だ。

「あれは……失敗しただけだ」

「嘘おっしゃい、僅かだったけれど試合中に何回か目を細めていた。疲れ目かなんだかは流石にわからないけど、一応医者に行って目薬でも貰いなさい。烏養監督にも口添えしたから」

「時縞、お前なんか"ヤバい"な」

「話をそらすんじゃない」

この男、バレーから離れるとまるっきり世間知らずの大馬鹿ものなので、丸め込むのも非常に楽である。将来的に不安だ。今でも。
運動能力、センス、 見た目も他人より秀でているならそれくらいの欠点はあってもいい。

どうせ影山も私もその辺の他人とは一線を画していたとしても、下らない本能に突き動かされる人間である。人間だという事実の上に、更に塗り重ねた差別化には決して抗えない。

綺麗なものどうしで惹かれ合う選択肢は、この非常な世の中には、どうやら無いようなのだから。


「――おい、……時縞、なにぼーっとしてんだ」

「いや。私達は烏なのに不自由なんだなと少し、ね」
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