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HQ短編‼︎

第5章 【オメガバース】 月島 影山 菅原


影山はかつて『コート上の王様』だった。
あだ名でつけられる王様、という称号。プラスイメージとマイナスイメージのどちらがつくか?とアンケートをとったのなら、どちらが得票数が多いだろう。

王とは支配者だ。
上に立つことで毒にもなり薬にもなり得る。セッターとは、バレーチームという1つの体のブレイン、脳みそだから、そんな例えは確かに合っている。
圧政をしけば反発を生み、逆にただの易き王になればそれはそれで諍(いさか)いの元なってしまう。

影山飛雄は、そして彼との間に深い溝を刻んだ人達は、そんないつの間にかできあがっていた舞台に引きずり出されたただの無力な人間だった。

彼の過去に正解などを求めるのは無粋極まりない。だがわたしは、次の舞台では、彼を『王様』ではなく、独りにならない、されないセッターにしようと、心から決めていた。変える必要があった。彼の持つ他人への認識と、他人が彼に持つ認識、両方を。
わたしは北一時代に特別彼と仲が良かったとか、マネージャーだったとかは微塵もなかった。
ただわたし自身が、わたし以外のために、少し手助けをするつもりで。
自己満足を得るために。
わたしは、"彼が白鳥沢に落ちてから"、本腰を入れて勉強を教えた。ただそれだけの話だ。

お陰でいつの間にかわたしも烏野に行くことになっているし、(いつの間ry)マネージャーになることになっているし、(いつのry)妙に懐かれるしで全くもって予想外だったが、将棋ともチェスとも違う戦略はやけに面白かったし、すっかり流されてもうこんなに時間が経っていた。

優れた能力を持つ人間に惹かれるのは人間として当然のことだ。思いながら、どこかで動物的な本能に逆らうために、影山飛雄を利用する己を、誰かが嘲笑った。
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