第2章 秘密
「追越(おいごし)くんは、将来とか決めてる?」
フォークを置いてマグカップに口を寄せる彼女の動作の一つ一つを見逃さないように目で追っていく。
熱いマグカップの底をカーディガンで包むように持っている彼女の小さな姿。
…愛しい。
それ以上の感情でなんて表せないほど。
「…聞いてる?」
「あっ、ごめん」
二度目の彼女の睨みに、俺は慌てて謝罪を口にすると視線を逸らした。
冷静さを取り戻すようにマグカップの中のミルクティーを口に含み、ゆっくりと息を吐く。
「まだ決めてないよ。大学に行くか専門に行くか、就職にするかすらね…」
まだ将来の事など曖昧で形などない。
まるでこの関係のように…。