第1章 死を運ぶ文鳥
泣きながら、みゆは「うん」と言って頷いた。
みゆを立たせ、涙を拭ってやる。
「香織、ありがとう…」
私は微笑み返し、2人並んで歩き出した。
「姉ちゃん!」
忠が、裏路地の入り口に立って手を振っている。
私が忠に駆け寄ろうとした時だった。
「香織危ない!」
そうみゆの声が聞こえたかと思ったら、私の体は後ろに凄い力で引っ張られ後ろに倒れた。
その反動で、みゆ体が前に出る。
頭上に迫っていた、大きな看板。
それが、みゆめがけて落下する。
「みゆ……!」
彼女が少しこちらを振り返り、笑ったような気がした。
凄い音と共に、みゆが目の前から消えた。
地面と、落下してきた看板の間から、みゆのものと思われる赤い血が流れ出す。
状況が理解出来ず、私はその場から動けずにいた。
「姉…ちゃん…」
忠が、私の肩を掴む。
「立てる…?」
私は小さく頷き、手をかりながら立った。
「みゆを、助けなきゃ…」
そう呟き、看板を持ち上げようとした。
が、その手を忠に掴まれ阻止された。
「……ダメだ。今彼女を見たらきっと…死にたくなる」
悔しそうに唇をかむ忠。
私はそんな彼に連れられ、逃げるようにしてその場をあとにした。