第1章 死を運ぶ文鳥
5日目──
昨夜、探しても探しても、みゆは見付からなかった。
彼女の住んでいるアパートに行っても留守のようだった。
ひとり暮らしの彼女を見付けるのは困難だ。
手掛かりも何もないし。
当然携帯にも出ず、昨夜は諦めそのまま家に帰った。
「忠、行こう」
「うん」
2人で家を出て、また探し始める。
どうか、無事でいてほしい。
自分で命を断っていなければいいが…。
でも、有り得ない話ではない。
自分の好きな相手を、自分の手で殺めてしまったのだから。
「忠、ここからは手分けして探そう」
「分かった。俺はこっちを探してみる」
忠と別れ、私は走り出した。
一刻も早く、見付けなきゃ。
私の大切な、友達を…。
暫く探して、ようやく見付けた。
みゆは裏路地にいた。
そこでうずくまって泣いていた。
静かに近付き、肩に触れる。
「ひっ!」
ビクッと肩を震わせたみゆが、顔を上げた。
「香織、何で………私を、殺しに来たの…?」
「ううん、殺すわけない。だって友達だから」
「……恋人を殺した相手を、まだ友達だと言えるの…?本当にお人好しね…」
自嘲気味に笑ったみゆは、ポケットから透を刺したナイフを取り出した。
「何度も、死のうと思ったのに、手が動かないの。何故だか分からないけど、震えて動かない…」
ナイフを地面に置き、またうずくまる。
「それで、私を楽にして、香織…」
みゆ…。
そんなこと、出来るわけないじゃん。
私はナイフを手にとり、投げ捨てた。
「みゆ、私は生きなきゃいけない。それから、周りの人も守らなきゃいけない。だからみゆのことも、守らなきゃいけないの」
もう一度肩に触れ、抱き寄せる。
「一緒に帰ろ…?」