第9章 狂犬?注意-双子座一族の薙刀士-
ある日、二人で話がしたいと○○に告げたナギの肩には、いつも一緒にいるはずの獣型の双子の姿がなかった。
この時、あるいは○○が何かを感じ取れたなら良かったかもしれないが、双子とはいえ、彼らも常に一緒にいるというわけではない。
今回も、たまたま別行動をしているのだろう。
その程度の認識で、○○はナギの申し出に何の疑いもなく応じた。
そうして素直についていった先、○○はそこでナギの腕に囚われ、初めて異変を知った。
ナギを疑うなんて思い浮かびもしないまま辿り着いたのは、知らない場所…知らない、部屋……。
けれど、畳に敷かれた一組の褥に○○が目を見開いた時には、それまでの全てが変わっていた。
逃げる間も、言葉を交わす間すらなく、驚きの中で○○は押し倒され、褥の上に縫いとめられていた。
「ナ……っ、んっぅ…っ」
「○○……○○……!」
足掻くことも、押しのけることもできない。
覆いかぶさるナギの…いや、男の手が○○の衣を乱し、肌を暴くように蠢いていく。
初めての経験と、ナギの豹変という二重の衝撃に、○○はどうにかなってしまいそうだった。
「ナギ……だ…めぇ……っ」
「は……っ、○○っ、好きだ…好きだ……っ」
もがくほどに衣ははだけ、男の前に肌が晒されてしまう。
他人に…しかもナギの前であられもない姿を晒すなんて、それだけで○○はもう、恥ずかしさで気が遠くなりそうだ。
なのに、
「○○…ああ、綺麗だ…可愛い、俺の○○……っ」
膨らみに触れられた途端、びりびりと痺れるように何かが身体を突き抜ける。
「は……っ、ぁ、ゃ、あっ、みな…で、ぇ」
「どうして?○○、すごく綺麗だ。綺麗で、可愛くて、全部、全部、俺が可愛がってあげたい」
それは確かにナギの声なのに、甘く掠れるようなそれは、まるで別人のようだ。
いつものナギが○○を『陰陽師』と言っていた呼称が、部屋に入った瞬間から『○○』へと変じていることにも、今の○○は気づかない。
そんな余裕はおろか、○○は甘い責め苦の中、次第に何も考えられなくなっていく。