第9章 狂犬?注意-双子座一族の薙刀士-
そして、その内に気がついた。
これは、双子のキナに対するものは違う。
全然…まるで違うと……。
傍にいて、声を聞いて、彼女が笑っているのを見ているだけで幸せだった。
だが…それだけではないと気付くのに、時間は掛からなかった。
「好きだ…好きだ……○○」
陰陽師だからではなくて、ただ懐くだけのものでもなくて。
(そうじゃ…なくて……)
「俺………」
ぐっ、と握った拳に爪を立てるナギの胸中を、○○は知らない。
そして、ナギが女性の式神と二人で過ごしている光景に、○○が無自覚ながらも胸に痛みを感じていることを、ナギは…知らない。
互いが互いを理解しえない状況の中、陰陽師としての任に○○は日々を謀殺され、式神もまた、これに追随する。
こうして一見何事もなく、無事に過ぎる日々の先…○○がナギと距離を置き始めてから数ヶ月が過ぎようとする頃、“それ”は起こった。