第13章 遠い約束-氷獣鬼-
そうして訪れた、先刻の比ではない少女の絶頂に、獣は自らの精をその胎内深くに注ぎ込んだ。
「ゃっ…ぃぁっぁ、ぁぁぁぁぁ!」
「ぅ…っ、ぐ…ぉ、出す…ぞ……っ」
「ん、ぁ…ぁぁっ」
どく…っ、どく、んっ!
熱い何かが、○○の奥深くを満たしていく。
「ゃ…ゃっ、あつ…い…っぃ」
冷気を纏うという獣は、最初はあれほど冷たくて、寒かったはずなのに……。
いつの間にか…今はどうしようもないほどに熱くて、○○は身体の中から焼き切れてしまいそうだ。
「ぁ…ぁぁっ」
「案ずるな、これは『番い』の儀式ゆえ」
「ぎ…し、き……」
茫洋とした○○には、その理解はすぐには追いつかない。
それを見越した上で告げた獣は、しかし、満足気だった。
「うぬに注いだは、ただの精ではない。この先、我と共にある為のもの……」
「?………っ!」
やはり、今はまだ分からぬか、と嘯く獣に包まれながら、○○は、はっとしたように遅れて理解した。
『同じ時を生きる』
恐らくは今のこれが、その為のものだったのだ。
「時が満ちた後には、うぬを貰い受ける。それがあの折の誓約……」
獣の嘯きを受けた○○は、その意図を理解したと同時に、幼い日の記憶をも取り戻したのだと伝えたかった。
ただ犯し、手に入れるだけなら、もっと容易に、更に言うなら無理矢理に、獣は自分を好きなように扱えたはずなのだ。
なのに…獣は、ずっと優しかった。
強引で、いきなりで…けれど、長く鋭い爪先一つすら、傷つけぬようにと注意を払ってくれていたことも、今の○○は気づいている。
熱く激しく求められ、貪られるような心地に晒されながらも、記憶を取り戻したことで、獣が自らに注ぐ優しさと愛情とを、○○は図らずも思い知らされてしまった。
だからと言って、自分も彼を恋慕しているかと問われたなら。
考えたくても、獣によって蕩かされ…翻弄され、四肢同様に溶かされた意識は、○○に思考することを許してくれない。
考えようと思うのに…それすらも、霧散してしてしまう……。
(わかん…ない……)
自分のことなのに、分からない。