• テキストサイズ

陰陽の道≒式神との道

第12章 唯-小鳥遊正嗣-


あんな…何て淫らで、艶めかしい……。

(私…どうかしちゃったの……?)

そう思い悩みすらする傍らで、けれど脳裏に浮かぶ光景が消え去ることはない。

「私…私…は……っ」

苦しくて…胸が痛い。
でもそれは、浮かぶ光景に痛むのでは…なくて。

(そうじゃ…ない。…私は……)

胸に痛みを抱えながらも、こんなことを誰かに話せるはずもない。

なのに、煩悶する○○を嘲笑うかのように、当初は一瞬脳裏を掠めるだけだった『それ』が…『あの光景』は少しずつ広がりを見せ、○○の中で鮮明になっていく。

まさか…という思いとは裏腹に、一瞬閃くだけの幻影のようだった『それ』は、次第にはっきりとした記憶の形を象っていった。

そうして……。
○○の中に、やがて完全な形となって甦ったのは…あの夜の、真実……。

苦しくて、壊れてしまいそうだった、あの夜。
覚束ない足と、何も考えられない頭で、それでも向かったのは、彼の邸だった。

何故…なんて、あの時には何も分からなかった。
何の自覚もなく、気づいた時には彼の元へ行き、縋っていた。

救いが欲しかったのだろうか……。

今は、そんな風にぼんやりと思う。

(お客の女の人達のように?)

浮かんだ自らの考えに、○○は薄く…自嘲した……。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp