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陰陽の道≒式神との道

第10章 標的捕捉-諜報部隊・隊長-


昨夜、既に自分は少女を抱いた。
それも、初めてというその身を……。

昨夜の己は、確かに常の己を欠いていた…とはいえ、欲する相手を思うさまに抱いた後になって今更、という誹りは免れない。

少女からの非難であれば甘んじて受けねばなるまいと、男は、ふっ、と○○から身を引いた。

身体も心も、本当は今すぐにでも目の前の少女が欲しくて堪らない。
だがこれだけは…○○には話しておかなければ……。

本来なら、昨夜…○○を抱く前に伝えておくべきだったろう話を、男は…突然の変化に驚いている○○を前に、神妙な面持ちで口火を切った。

それは…己の生業……。
単なる諜報活動員というなら、まだ良いだろう。
だが自分は、その上に、更に要人の暗殺という任を負っている。

人の生命を絶つという己が身の上を、ただ時折話すだけの相手ならいざ知らず、もはや本気で想い、この先も共にいたいと願う相手に秘する気にはなれなかった。

もっとも…契約によって雇い主は明かせないが、それでも明かせるべきは、この少女には伝えたくて。

「○○…今まで黙っていたが、俺の仕事は……」

話すことで、○○の、自分を見る目が変わってしまうかもしれないとしても……。

本気であればこそ、秘密のままにはできなくて。
だから…と、せめても強張った自分の面を見られたくなくて、○○を懐に抱き締めて語れば。

その反応は予想外、というよりも、何とも拍子抜けな、

「うん、知ってた」

あっさりとした○○の(素肌のまま抱き合っているせいか)恥ずかしそうな笑顔でもって、この…重くなるはずだった男の告白は終わりを見た。

何ともはや、脱力ものな顛末だが、○○と出会った当初、男が○○の身上を調べたように、○○もまた、男の正体を知るべく情報を集めたらしい。

「最初に会った時間も場所も普通とは違ったし、だから念の為って思って」

勝手に調べてごめんなさい、と詫びる少女に、男は苦笑した。
詫びるのは、そもそも自分の方だろうに、と。

しかし○○は、けろりとした顔で、ややバツが悪そうに肩を竦めた。
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