第10章 標的捕捉-諜報部隊・隊長-
外は…多分、もう朝のはず、なのに……。
○○は乱れる呼吸の中でそう言うが、
「悪いが…止められない」
「えっ…あ、あの…っ、ちょっ…、んぁ、ぁっ」
彼にしても、昨夜の出来事は○○にとって初めての体験だったろうことは、その身に触れてすぐに知れた。
それでも健気に身を委ねてくれるのが堪らなくて、少しでも優しく、負担を掛けないように、と理性を保てたのは、何処までだったろうか。
気づけば溢れる想いのままに少女を抱いていた。
だから本当は、ちゃんと休ませて、それから送っていくつもりだった。
もちろん、こんな風に朝から○○を押し倒す己など想定外だ。
だが現実は……。
「駄目だ、まだ…帰さない」
「たいちょ…さ、ぁんっ」
「そうだな、せめてちゃんと俺の名前を呼ぶようになるまでは……」
男は○○の耳朶に熱い吐息を吹き込んだ。
「離してやらないぜ」
奥手で、男女のことなど知らない○○が、男に身を任せる。
それがどれほどの勇気を要したか、男の己には計り知れない。
それでも、○○は身を委ねてくれた。
そのことが、どれほどの狂喜を相手にもたらしたかなんて、この少女は思いもしないだろう。
ましてや目が覚めた途端、離しがたくて抱き締めたまま眠った腕の中で、柔らかな温もりが身を捩っていた上に、
『軽い女…とか、思われちゃった、かな……』
なんて、無用の心配をしながら、恐らく無自覚だろうが、もじもじと動かれたりしたら……。
(我慢できるか)
そうでなくとも、互いに一糸纏わぬ姿なのに。
触れ合う肌が、更に掠めるようにされたりしたら、このまま、離してやれるわけがない。
そのまま○○を優しく愛撫し始めた男は…しかし、ふと思い出したことに、動きを止めた。
自分はまだ、彼女に伝えていないことがある。
なのにこのまま、再び抱いてしまって良いものか……。
自問して…少女に触れる手を、男は戒めた。