第14章 腕前と衝突
「どうしたでござるか?」
『……あ、いや……その』
自分の行動に自分でも驚きつつ
うまい言い訳は考える
『えっと…あ、りがとうございます』
とっさに出たのはそんな言葉
絆創膏張ってもらってお礼言うだけで手を握るとか、子供じゃないんだから
恥ずかしさからうつむいてしまった私の頭に、緋村さんの手が乗っかる
「どういたしまして、でござる」
何も気にしない、といった笑顔が、私の心に刺さってでもそれでよかったのかもしれないなんて思う自分もいて
なんで片思いってこんなに複雑な気分ばかりになるんだろうか
片思いが一番楽しいだとかよくいうけれど
でもそれと比例して一番傷ついたりする
両思いになる人ってすごいっていつも思ってる
自分の好きな人が自分を好きになるってすごい
私も緋村さんと両思いになれたらいいのに
でも、そんなことはないから
だから今は片思いを満喫しよう
鼻歌を歌いながらお米をとぐ緋村さんを見て、そう思った