第14章 腕前と衝突
「真愛殿。今日は何を作るでござるか?」
『由太郎君と佐之助さんがいるので、すき焼きにでもしようかなって思ってます』
当たり前のように食べていた平成の料理はどうやらこっちの世界では見たこともない料理らしくて
ハンバーグやシチューを作れば、みんな喜んで食べてくれた
とくに弥彦君と佐之助さんは肉が好きだから
肉料理ならなんでもたべてくれる
今回は由太郎君もいる
きっと彼も肉が好きだと思うし、絶対に争奪戦になる
だから、ハンバーグとかから揚げではなく
すき焼きという戦法をとった
いくらでも彼らが食えるように
2人、台所に並んで、野菜や肉を切ったり、みそ汁を作ったり、お米を研いだりと分担して作業を進める
ざくざくと白菜を切って、一人一つ用意されているすき焼き専用の鍋にいれる
佐之助さん、弥彦君、由太郎君には、お肉いっぱい野菜少な目
緋村さんと薫さんは、お肉と野菜が均等になるように
私は、お肉少な目野菜多めという形にした
私もお肉食べたいけど、最近太ってきたしビタミンも取るという意味で、ね
白菜を切り終わり、ニンジンを切る作業に取り掛かる
と、その時
「真愛殿はいつから左之のことを名前で呼ぶようになったでござるか?」
緋村さんからそんな質問が飛んできた
思わず、包丁の動きを止めてしまった
なんでそんなこと聞くんだろう
『えっと……恵さんがこの道場に来たとき、だったかな』
名前で呼ぶきっかけとなったあの日のことを必然と思い出してしまった
握られた手
ぶつかり合う視線
その他もろもろ
そのすべてが脳内で再生され、顔が熱くなる
それをごまかすために首を振り、止まっていた包丁を動かした
『それが、どうかしましたか?』
「いや。拙者も名前で呼んでほしいと、そう思っただけでござるよ」
『え……?』