第2章 はじまりの物語
『わかりません……』
「わからない?」
『食べ物には困っていません。世の中も便利なものが増えました。幕末のような戦争も日本ではありません』
「そうか、それならよかったでござ……」
『でも、どの時代も人は血を流して死ぬことは変わりません』
緋村さんの声を遮った
私は、もしかしたらずっとずっと聞いてほしかったのかもしれない
自分が今まで溜めてきた思いを
知ってほしい、この人たちに
今の日本の状態を
私は、人間が嫌いだ
平成が嫌いだ
全部全部、大嫌いなんだ
『平和、平和って言いながら、流血沙汰は絶えません。なんの理由もなしに人が人を殺しています。ほかの国だってそう。戦争している国は今でもあります。たくさんの人が死んでます!弱い者いじめをするやつもいるし、私みたいに自分で自分を殺すやつもいる!新時代を切り拓くために刀をとった幕末の人たちとは違うんだ……。なんの信念もないくせに、いっちょ前に、殺人はするし気に食わなければいじめる。そんな世の中なのになにが平和なの!?平和って誰も血を流さないで幸せに暮らすことなんじゃないの!?嫌いだっ……。こんな世の中……。でも、私はそんな世の中に生まれてきて、中途半端にずっと生きてきた……。あなたたちのように信念を持って生きることができたらって何度も思った。でも、そんな簡単にはできないくて、そんな言い訳ばかり繰り返す自分が嫌いで、でも本当に嫌いになれるはずもなくて……』
気が付いたら泣いていた
自分でも何が言いたいのかが分からない
ずっと溜めてきた思いが爆発してしまった
最悪だ
知りあって間もない、しかも未来の日本のために頑張ってる人たちの前で
本当に、私ってなんてバカなんだろう
「真愛殿」
涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる
緋村さんは私の頭に手を置き、髪を撫でた