第8章 自傷の傷と心の傷
道場に戻れば、薫さんの機嫌は少し直っていて、弥彦君も戻ってきた
夕食を食べた後、緋村さんと恵さんは部屋に篭り、観柳のことなどを話していた
私と相楽さんは部屋の外で見張り中
なんだけど、ずごく気まずい
なんでだろう、いつもは二人きりでも気まずいなんてことはないのに
もしかしたら、今日のこと怒っているのかも
『……相楽さん』
「あ?」
『もしかして、今日のこと怒ってますか?迷惑かけたこと』
「怒ってねーよ。怒ってねーけど……」
言いかけてやめる
結構私もそういうことするけど、すごく気になる
『なんですか?言ってください』
「……気に食わねえなって」
『え?』
「俺はお前が無理して笑うのが気に食わねえ」
まっすぐ私の目を見る相楽さん
その目は真剣で、いつものふざけた雰囲気はどこにもない
「つらいならつらいって言えばいいだろ。泣きたいなら泣けばいいだろ。作り笑顔されたってこっちは全然嬉しくねェんだよ。悩みがあるなら黙ってねーで誰かに相談しやがれ」
『……迷惑、じゃないんですか?わがまま、ばかり言ったら迷惑、かけるじゃないですか。それが嫌だから……』
膝を抱えて、私はぼそりとつぶやく
すると、隣から盛大な溜息が聞こえた
「あのな、お前の場合少しはわがまま言え。というか、思ったことを口にしろ。陰で泣かれちゃ困るんだよ」
『こ、まる……?どうしてですか?』
「そりゃあ、目覚めが悪いッつーか……。とにかく、俺が嫌なんだよ」
相楽さんは、照れくささをごまかすかのように頭を掻く
『……ありがとうございます』
「なにがだ?」
『何でもないです』
私はそう言って笑った
すると、相楽さんも口の端をあげて笑った