第2章 兄と妹とその周辺
ネクタイを締め、ブレザーを着る。
そしてエナメルバッグを持ち、莉緒に向かってまた一声かけた。
「いってくる」
「うん、いってらっしゃい」
莉緒の声を聞き、玄関を出てしっかり鍵を閉める。
腕時計を見ると、結構ギリギリな時間だった。
このまま普通に歩いていると、電車の時間に間に合わないので、俺は仕方なく駅まで走った。
side 莉緒
「別に鍵閉めなくてもいいのに」
私は小さくため息をつく。
幸男は何かと過保護だ。
少し帰りが遅くなったりするともの凄く心配するし、一人で留守番させる時は必ず鍵を閉める。
正直そこまでされる理由がわからない。
妹…だからかな?
まぁ妹と思ってるなら目くらい合わせてほしい。
「今日も合わせてこなかったな〜」
誰もいないリビングで、一人呟く。
食べ終わった皿を持ち、流し場へ向かった。
ふと視線をずらすと、カウンターに置いてある、あるものに気がついた。
「あ、お弁当渡すの忘れた」
そこには、青い布に包まれた幸男のお弁当がぽつんと置いてあった。
「仕方ない、今日は余裕あるし、届けに行きますか」
蛇口をひねり、水をだす。
私は洗い物をさっさと終わらせようと、スポンジを手にとった。