第2章 兄と妹とその周辺
「森山先輩、急にどうしたんスか?」
黄瀬がこそこそ尋ねてくる。
「俺が知るか。わかったらあいつに苦労しねぇよ」
「そうっスよね〜」
答えを聞いた黄瀬は、着替える手を再開させる。
こういうことには、巻き込まれる前に帰った方がいい。
「お泊ま(り)会?何でまた?」
よせばいいものの、早川が改めて森山に聞き返す。
「それはな、早川。さっき監督の言っていた通り、金曜から土曜は体育館が使えない。それが急だったため、珍しく俺たちに二日連続のOFFが与えられた。これをお泊まり会に利用しないわけにはいかないだろう!!」
「おー!な(る)ほど!!」
森山は何故か得意気で、早川はそんな森山に尊敬の眼差しを向けている。
「という訳で、笠松。金曜から土曜、お前の家大丈夫か?」
「どういう訳だ!!何で俺の家なんだよ!!その前に、俺は参加するなんて言ってないぞ!!」
突然話を振られたが、驚く暇もなく突っ込みをいれた。
「何でって当然だろ。笠松の家が一番ここから近いし、ご両親もいない。絶好の条件が揃っているじゃないか。逆にお前の家以外思いつかない。あ、参加はここにいる奴全員強制で」
「何でだよ!!場所ならお前の家とか…、黄瀬の家でもいいだろ!!つーか強制とかふざけんな!!」
「え!?何でそこ俺の家なんスか!?」
黄瀬が驚きの声で尋ねてくるが、そこは無視だ。