第2章 兄と妹とその周辺
side 幸男
「お泊り会!?」
ご飯を口に運んでいた莉緒が、その手を止めて驚きの声を上げる。
思った通りの反応だった。
「まぁ…そうだ」
「何でまた急に…、どうしたの?」
止まった手を再開させ、尋ねてくる。
「なんつーか…、昨日練習試合あっただろ。それでゴール壊した奴がいたって話したよな?」
俺は確かめるように言う。
莉緒は首を縦に振った。
「そのゴールが壊れたおかげで、急遽金曜から土曜に修理が入ることになったんだよ。ついでに全ての古いゴールも直そうってことになってな」
「へ〜、よかったじゃん。新しくなるんでしょ?」
「ああ。まぁ俺たちとしてもそれはありがたいんだけど、急だったから練習試合も組んでないし、練習する場所も取れてないから、珍しく二日連続でOFFになったんだ。そしたら森山がな…
部活終了後。
更衣室で制服のワイシャツに腕を通していたところで、森山がノリノリである提案を出してきた。
幸い、更衣室にはレギュラーしかいない。
「お泊り会をしよう」
「「「「は?」」」」
声を揃えて、森山以外の四人が聞き返した。
幸男以外の三人は、制服へ着替える手まで止めている。
「だから、お泊り会をしよう」
今度はこちら側を向いて、少々キメ顔で言ってきた。
その顔に俺は、腹が立つのと同時に悪い予感しかしない。